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ネットサロン

自由投稿部門 『工芸』 高梨廣孝

はじめに

ヤマハOB 会のネットサロンに、毎年バイクのスクラッチモデルを投稿している。
私自身バイクマニヤではないが、移動手段としては4 輪とは異なり、機械と人間が一体となって走るところに大きな魅力を感じている。
また、むき出しになったメカニズムにもそれぞれの個性があって美しい。
しかし、バイクにそれほど親しみを持っていない人にとっては、どれもが似たようなものに感じられて大きな関心を寄せるものではないかも知れない。
そこで、今回はバイクに興味がない人でも、もしかしたら興味を持ってくれるかもしれないバイクを選んで制作して見た。

BROUGH (ブラフ) とは

BROUGH 社とは、1919 年から1940 年までの20 年間に約3000 台のモーターサイクルを生産したイギリスのメーカーである。
バイクの主要部品であるエンジンやギアボックスは、それぞれ専業メーカーから購入している。
一見アセンブリーメーカーにも見えるBROUGH 社が生産したバイクには「モーターサイクルのロールスロイス」という最大級の賛辞が
与えられていた。
その理由は、創始者であり社長であるGeorge Brough が最後のテストライドを自ら行い、公称するトップスピードが時速100 マイルに
達することを確認して、1 台1 台に「保証書」を添付していた。
もし、最高速が出ない場合は、徹底的なチューニングアップを行い、最高速を確認したのち出荷するという厳しい品質管理を行っていた。デザインの豪華さや作りの素晴らしさだけではなく、最上で最速のモーターサイクルを楽しみたい人のために提供していたのである。

このバイクの見どころ

「バイク好き」の仲間に「ビンテージバイクの中で1 台選ぶとすれば」と問えば、必ず名前の挙がるのがBROUGH である。
高性能なエンジンメーカーJAP のエンジンを搭載、変速機はSTURMEY ARCHER 社を採用するなど最上級のメカニズムを搭載し、
性能には非の打ちどころがない。
ガソリンタンクは3 個の金属バンドで固定されており、これがデザイン上の大きなアクセントとなって美しい。
100 年前のこの時代のバイクには、バッテリーがまだ搭載されておらず、ヘッドライトはガス燈である。
今回のモデルにはフィッシュテールマフラーを装着した。
大海原を矢のように泳ぎ回る魚をイメージしてこのようなマフラーがデザインされたと思われるが、現代のバイクデザインでは採用される可能性は低い。
このように重くて大きなマフラーが重心から離れたところに装着されると操縦性が著しく損なわれるからである。
フィッシュテールマフラーこそ、ビンテージバイクの証かも知れない。

金属で制作した部品を仮組して、全体のバランスを調整する

ガソリンタンク、サドル、フェンダーを装着して最終確認をする

BROUGH にまつわる逸話

このモーターサイクルを有名にしたのは、1963 年に公開された映画「アラビアのローレンス」である。
映画の冒頭シーンで、飛び出してきた少年を避けようとしてバイクに乗ったローレンスは転倒し、非業の死を遂げる。
この時乗っていたバイクがBROUGH である。
オスマン帝国からのアラブ独立を指揮した英雄ローレンスは、BROUGH の熱心な信奉者であった。
新しいモデルが出るたびに乗り換え、事故を起こしたバイクは7 代目のBROUGH であった。
ローレンスはスピードマニアではなく、美しいイギリスの田園風景の中をライディングすることで、日ごろの激務による疲れを癒していたのである。

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